中京重機のオフィシャルブログです。
2022 02.10
先月、建設機械業界、世界第三位の規模を誇る日立建機の株式一部売却について発表がありました。
≪今週と来週の2週に渡り、すでに発表されている各種の情報を私なりに整理をして、日立建機の株式の一部売却の経緯と日立建機の今後の動きについて考察してみたいと思います。今週はその①ということで、株式の一部売却に落ち着いた経緯を探ってみます。≫
さて、昨年の冬も雪害にお見舞いを申し上げるところからブログを書き始めましたが、今シーズンも日本列島各所で雪の多い冬となっております。
北海道では札幌駅発着の列車が全て終日運休する事態となるなど、各地で大きな被害が出ております。
私自身も10代後半から数年間ですが北海道に住んでいた時期がありまして、このような大雪のニュースが耳目に触れるたび、寒さと雪との戦いの日々が続く雪国の冬の厳しさを思い出し身につまされます……
また新型コロナウイルスも変異株の特性に沿って流行を繰り返し、現在はオミクロン株が世界各地で猛威をふるっております。
半年前に書いたブログと同じことを書くことになりますが、各々がコロナ陽性者とならないように心掛けて日々の生活の中で可能な限りのコロナ対策をしていくしかありません。
今年1月14日、日立製作所は、保有する日立建機の株式51%相当のうち26%相当を伊藤忠商事と日本産業パートナーズが出資する特別目的会社へ売却することで合意したと発表しました。
これにより、日立建機が日立製作所の連結から外れ持ち分法適用会社となることで、日立製作所にとって2009年に22社あった上場子会社の整理がほぼ完了することとなります。
日立建機の株式売却にあたっては、全部売却なのか一部売却なのか、はたまた完全子会社化なのか、日立製作所内でも紆余曲折があったと聞きます。
ここでキーポイントとなるのが「Lumada(ルマーダ)」と「ConSite(コンサイト)」です。
リーマンショック後、日立製作所は「モノ売り」からITを活用する社会インフラ事業である「コト売り」へと事業再編を進めてきました。
日立製作所は現在、IT(情報技術)事業を本業に据えており、あらゆるモノがネットに繋がる独自のIoT(アイオーティー)戦略である「Lumada(ルマーダ)」をIT事業の中で最大の成長エンジンと位置付けています。
もうひとつの「ConSite(コンサイト)」は、日立建機が展開するIoTによる建設機械の遠隔管理システムで、販売した建機の稼働率等を監視して建機の故障などを予測し、そのデータをメンテナンスセールスに生かして収益を上げています。
日立製作所は、この「Lumada(ルマーダ)」と「ConSite(コンサイト)」の親和性の高さについて無視することが出来なかったのではないかと思います。
日立グループのLumada(ルマーダ)関連の売り上げ(約1兆円・2019年度)のうち20%が日立建機によるものとなっているからです。
このように非常に大きいシナジー効果を発揮する「Lumada(ルマーダ)」と「ConSite(コンサイト)」の存在が、日立建機の株式の全部売却にまずブレーキをかけたのでしょう。
一方で、リース資産を多く抱える日立建機は総資産が大きく資本効率があまりよくありません。
なおかつ海外でのレンタル事業の強化を掲げて資産の積み増しの方向で動いていたことも相まって、連結資産の圧縮を進めてきた日立製作所からするとどうしても戦略の方向性が合いません。
このようなことから日立製作所内では株式の全部売却の声もかなり根強かったのではないかと想像します。
また完全子会社化については、日立建機の総資産が大きいこと、日立建機単体でも事業を展開できるという独立心の強さなどが高いハードルとなり現実的ではなかったようです。
こうした事情が絡み合い、最終的には「Lumada(ルマーダ)」と「ConSite(コンサイト)」のシナジーを期待して、日立製作所の日立建機への関与を残す形で株式の一部売却という結論に落ち着いたのではないかと私は推測しています。
今週はここまで。
来週は日立建機の今後の動きについて整理してみたいと思います。
日立製作所が日立建機株約半数を売却した。
Lumada(ルマーダ)とConSite(コンサイト)のシナジーに注目!
加藤 一明
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