中京重機のオフィシャルブログです。
2017 03.14
カテゴリ: 建設機械、 自走式クラッシャー、 オリジナル重機・建機、 ガラパゴス、 中古、 環境リサイクル機械
今回は、当社サービス部のお客さまのリサイクルプラントにお伺いした際に発見した、1台の自走式クラッシャーから、国内における自走式クラッシャーの歴史と当社のかかわりについてお話ししたいと思います。
「自走式クラッシャー」
建物解体現場内や産業廃棄物処理施設内などで主にコンクリート解体材(ガラ)を破砕するために稼動しているので、皆さんがあまり目にすることはありませんね。
歴史的にも国内デビューして四半世紀、国内の年間需要でも油圧ショベルが62152台に対し、自走式クラッシャーは103台(出展:日本建設機械工業会)ですので、非常にマニアックな建設機械です。
でも、実は・・・私たち中京重機が取り扱いを得意としている自走式環境リサイクル機械の中でも、特にその黎明期から深いかかわりを持っている・・・という事を、当社の中でも知っている社員は多くはありません。
当社約60年の歴史の中では、さまざまな建設機械の応用製品の設計・製作や改造も行ってきました。
その多くが地元名古屋の建物解体・産業廃棄物処理を生業とされるお客さま個々の、「こんなものを作って欲しい」を汲み取り、形にしたものです。
その数ある応用製品の中でも、自走式クラッシャーはうまく当時のトレンドに乗ると共に、お客さまが背中を押していただいた結果、世に生み出された製品だと思います。
【弊社お客様の所有するオリジナル自走式クラッシャー2号機。川重KS3018搭載モデル】
お客様のプラントで見た1台の当社オリジナル自走式クラッシャー
その自走式クラッシャーは愛知県西部、当社から車で約30分の弊社と長年お付き合い頂いている総合解体業T社様のリサイクルプラントにありました。
1988年製で、キャタピラ部&運転席は日立UH10 を流用、こちらにシングルトグルクラッシャ川重KS3018を搭載し、現在の動力はエンジン&油圧ポンプに変更してありますが、当時は日車125KVA発電機&モーターが動力でした。
これが当社オリジナルの自走式クラッシャー2号機です。
T社様によれば「施設設置許可の関係で、この自走式クラッシャーを使い続けている」とのこと。
1991年10月に最初のリサイクル法が施行されました。
コンクリート建物を解体することで発生するコンクリート解体材(ガラ)は建設副産物と呼ばれていましたが、本法施行により指定副産物として、再資源化を促進し有効利用する目的で、当時の建設省や建設業界に具体的な方針を定めるよう義務付けました。
それまで、解体現場で発生したコンクリートガラは現場から持ち出し、別の破砕プラントで破砕処理し、一部は再利用もされていましたが、ほとんどは最終処分場で埋め立て処分されていました。
実はこの処分コストが膨大で、時には解体作業全体経費の50%以上を占めることもありました。
中にはこの費用を抑えるために不法投棄を行うような社会問題も当然発生することになります。
一方で、解体業のお客様には以前から
「コンクリートガラを外に持ち出さず、現場の中で破砕処理し、解体後の現場に平らに敷き戻しすることでコストを抑えたい」という声がありました。
このリサイクル法とコスト圧縮課題が追い風となり、一気に「現場での破砕処理」というニーズが広がりました。
【日立UH07,郷鉄工S5,発電機のハイブリッド?機】
全国で先駆けとなった自走式クラッシャーは?
この時流に先立つ1987年頃、私たち中京重機も地元のお客様の声に応える形で最初の自走式クラッシャーを製作し、名古屋の総合解体業O社様に納めました。
日立UH07 + 郷鉄工S5 + 発電機の組み合わせ(全て中古です)で、売価はおそらく1000万円程度。
愛知県内の某紡績工場解体現場に投入され、発生したコンクリート解体材を全てその場で破砕の上現場に敷き均したそうです。
他社に先駆けた形で世に出しましたが、このような動きをしたのは当社だけではないようで、全国各地でも「鉄工所」を持つ地域中小企業がお手製の自走式クラッシャーを製作したようです。
リサイクル法施行が追い風となり1990年代前半は正に自走式クラッシャーの黎明期だったのです。
当社も含めて、あくまでお取引先のお客様に対する個別受注にとどまり、量産までには至っておりませんでした。
その市場成長性を見込み、オール油圧技術で一気にキャッチアップした企業が、そう、コマツです。
1992年に自走式インパクトクラッシャーBR60、1993年に自走式ジョークラッシャーBR200を発売し、ここから「ガラパゴス」のシリーズ化が始まります。
コンクリートガラの破砕を行う自走式破砕機の商品名を進化論にイメージさせて「ガラ」「パゴス」に結び付けるなんてコマツもキャッチコピーが上手ですね。
【ガラパゴスの説明】
【小型インパクトクラッシャータイプのBR60】 【川重製ジョークラッシャー搭載のBR200】
更に、これに追随するように国内建機メーカー各社の開発・製品化競争がヒートアップします。
毎年5月に東京ビッグサイトで行われる環境展には国内建機メーカーが自走式クラッシャーや派生商品である、自走式のスクリーン・土質改良機・木材破砕機・2軸破砕機などのいわゆる自走式環境リサイクル系建設機械を競うように発表&展示していました。
この頃が自走式クラッシャーの全盛期でしたね。
自走式環境リサイクル機械の発表&展示は2009年頃まで続きますが、リーマンショック後の各建機メーカーの製品戦略変更で、自社開発や生産の中止が相次ぎます。
これにとって代わって頭角を現したのがSANDVIK,ノードバーグ ,マクロスキーなどの海外製輸入機です。
一時日立建機が輸入販売していたノードバーグ LTシリーズなどは特に硬度の高い自然石破砕での評価が非常に高く、そのほかの海外メーカーの高性能自走式破砕機も日本法人(SANDVIC)や、専門商社 (TEREX , Metso Minerals) 経由で輸入され、徐々に国内での実績を上げております。
彼らは競争市場地位で言えば「フォロワー」になりますが、市場を砕石と限定すれば「チャレンジャー」戦略もとれるかもしれません。
国産では、コマツはオフロード法2014年基準に適合したBR380JG-3を2016年5月に発売し、自走式クラッシャーでの競争市場地位における「リーダー」を確立しています。
又、日立建機はシェアや量的経営資源面で言えば「チャレンジャー」の資格が十分あります。中断している製品開発が再開し、新製品の発表次第だと思います。
電動式クラッシャーDENDOMANの中山鉄工所は独自の市場を確立している点で「ニッチャー」戦略が功を奏しています。自走式破砕機でありながらすべてのパワープラントを電気モーターで統一している点では油圧式機械のメンテナンスに不得手な方や高い運転効率でランニングコストを抑えたい方にはヒットしているようです。
当社は1987年の1号機製作以降、1998年までの間に6社のお客様に計7台をオリジナルで製作・販売しました。
その内、把握しているだけで4台が現役として元気に稼働しています。
そして、この4台全てを今でも当社が直接メンテナンスしております。
メーカーの熾烈な開発・製品化競争を横目に、何か不思議にゆっくりと時が流れているような感じです。
自走式クラッシャーの歴史の紐を解くと、幸いにもお取引のお客様のおかげで当社が深く関わっていく姿見えてきます。
正にお客様と共にこの礎を築いた多くの中小企業の1社だったのです。
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