カテゴリ: 建機、 建設機械、 中古重機、 修理、 ガラパゴス、 木材破砕機、 新卒採用、 中途採用、 重機の整備、 ジョークラッシャー、 リサイクル機械、 測定、 オリジナルパーツ
中京重機のオフィシャルブログです。
2020 02.13
カテゴリ: 建機、 建設機械、 中古重機、 修理、 ガラパゴス、 木材破砕機、 新卒採用、 中途採用、 重機の整備、 ジョークラッシャー、 リサイクル機械、 測定、 オリジナルパーツ
こんにちは。
新型コロナウイルスのニュースが毎日ひっきりなしです。隔離生活を余儀なくされている方々には一日でも早く自由に生活できる日が来ることをお祈り申し上げます。それにしても未知の病原菌に対峙する医療関係の方や感染を未然に防がなければならない関係機関の方々にはとても頭が下がります。
さて、今回は環境リサイクル機械「バラしてみた」シリーズ第2弾で「コマツガラパゴスBR380JG-1E0」破砕機まわりの分解整備をレポート致します。重機整備の面白さが少しでもお伝え出来たらなあと考えております。
中古機市場では圧倒的な人気を誇るコマツ製のジョークラッシャー。その名も「ガラパゴス」。10トンクラスの「BR100JG」から大きなものは「BR550JG」かそれ以上と全世界で活躍しています。キャッチ―で親しみやすい商品展開が功を奏したのか「BR380JG」なんかは15,000HR以上稼働したものでもとんでもない価格で貿易業者が買っていったりします。でもよく聞くのが「固定リンクの摩耗・損傷を見落としていた。」とか「ベアロックシリンダーが実は寿命だった。」などの機械状態を見誤ったための納入後トラブルです。弊社も数年前まで大変高い代償(?もしくは授業料)を払っていろいろとその構造や修理コストについて勉強をしてまいりました。だから商品を買取するときはとても注意深く検品をします。そしてほぼ必ずと言っていいぐらい補修をして商品化をするようになりました。だから今回の機械についてもいつも通り破砕機周りをオーバーホールしていこうということに・・・。
さて、ジョークラッシャーは一般にシングルトッグルクラッシャーと言われ2枚の歯板のうち片方だけが動く構造となっています。プーリーの回転運動を利用して動歯が往復するだけの比較的単純な構造なのですが、このコマツ製品(BR380JG搭載型KCJ4222)だけがなぜそんなに修理費が高いといわれるのでしょうか?それは・・
1.世界に先駆けてベアロックシリンダーを開発してしまった。
2.破砕機を走行体に搭載する際に神業のようなクリアランスで設計変更している。
3.使用部品の素材強度や加工精度がハンパない。
からなんだと思います。
これらの修理を真っ向勝負で純正部品を使ってコマツカスタマーサポートさんに依頼していてはさすがにプレミアムな価格になるわけですね。世の中にはコマツ製品のイミテーションパーツは山ほどありますし、かのベアロックシリンダーをオーバーホールしてくれる業者もあります。あとは分解工賃(=人件費)を勉強と称して自社で賄えば、新車保証の切れた中古重機であればコストを抑えながら一定の品質を保つことも可能になるのです。
さあ、そんなこんなで分解整備レポートですが、今回の方針は以下の通り。
1.トグルプレート&シートの交換。
2.固定リンクブッシュ&ピンの交換。
3.ベアロックシリンダーはそのまま。
コンピューター制御が当たり前となった最近の機械はあらゆるデータが集積されています。ベアロックシリンダーの稼働データも例外ではなく要交換か否かはモニターで確認することができます。この機械はまだまだ使用が可能でした。ただし、ときどきシリンダーロッドの先端に取り付けられているブロックタイプのピンにがたつきが発生し、油が漏れることがあります。こうなると本体を交換するしかありません。オーバーホールよりもたちが悪いので要注意ポイントです。
BR380JGクラッシャーの第1の心臓部がベアロックシリンダーならば、第2の心臓部というのがこの固定リンクです。動歯の往復運動に変化を加え"すりつぶす"楕円の動きをさせるための構造体ですが、これらをつなぎとめている可動部のピンとブッシュが摩耗し、がたつきがでるのです。(カラ回し時に"カンカン"音が出るのはこれが原因。)しかしこれが大変狭いスペースに押し込まれていて作業が困難。今回はコンベアフレームを下ろして作業しましたが作業員は大変です。よく見るとクラッシャー本体から生えてきているブラケットにはブッシュが入っているのに固定リンクキャリアにはブッシュが入っていない!設計時に摺動面と摩擦が集中するポイントをよく理解してメンテナンスコストがかかりそうなところには交換可能なブッシュ構造としているんですね・・きちんと使えば長持ちする構造に作られている。ブッシュとピンを交換してオーバーホールするのですが、この純正ピンの加工面を見ると、、なんと旋盤ではなく研磨仕上げ!こんな大柄な機械なのに恐るべき精度に対するこだわりですね。
一般的にジョークラッシャーの消耗品といえば、動歯や固定歯、チークプレートなどの破砕する材料の当たるところ。(プロテクターや投入ホッパーなどはHARDOXなどの耐摩耗鋼で溶接補強すればよいのですが)これらの消耗部品は正直いって様々なイミテーション部品が販売されています。特にBR380JGなどの人気モデルならば価格も純正の半額ぐらいだし納期に困ることもありません。しかしもう一歩踏み込んだところで純正外の製品を選択できたらなあと思うものがいろいろあります。そんな部品の一つがトグルプレートとその両側に接しているトグルシートです。スイングジョーの裏側に取り付けられる鋼鉄製の板で動歯を押し込む働きをしている部品です。常に圧縮応力と摩擦にさらされている部分だけに結構すり減り(押されて変形!?し)ます。破砕機のオーバーホール時はこれらも一式で交換することが多いのですが結構高価!(部品だけで100万円コース)こういった箇所に耐摩耗鋼材などを使ったらなあと思ったりします。ちなみに今回このトグルプレートとシートを分析してみた結果は、トグルプレートがS20Cに高周波焼き入れをしたもの、そしてトグルシートがSCM440に同じく高周波焼き入れをしたものと予想されるとのこと。さすがのコマツもこの辺に高級素材を奢ることはしていないのですが、トグルシート側の機械加工がとても大変なことが分かりました。いつかこのあたりのイミテーションパーツが販売されなかなあ?と思いつつ・・
さて、今回のバラしてみたシリーズでも分かるのは、「修理費が高い!」といわれる「BR380JGの破砕機整備」について「それ相応の因果がある」という事です。
●使用時においては
・取扱説明書をよく読み構造を理解する。
・無理な使用はせず日々のグリスアップを欠かさない。
●整備時においては
・自社整備や近くの専門業者を開拓する。
・効率よくメーカー整備を利用する。
非常に精密な機械構造を持ち、高い理想の元に組み上げられた機械だけに、使いっぱなしにすると途端に高い代償を払うことになるこのBR380JG。どうしてもメーカー整備に頼らなくてはならない部分もありますが、自社での整備や専門業者とうまく付き合うことによって結果的に整備費用を部分的に抑ることは可能だと思います。時に機械を愛し使用時の特殊事例などをメーカーにフィードバックしてあげたりすると、意外と感謝されたりなどして、上手につきあえたりします。同じメーカーに頼むにしても決して丸投げで依頼などしない方が得策だと考えます。
1.BR380JG破砕機メンテナンスの要所は3つ。
・ベアロックシリンダー
・固定リンク
・トグルプレート&シート
2.それぞれが高い精度と設計思想で組み上げられている。
3.こまめにメンテナンスしておけば長持ちする構造。
4.自社or専門業者とメーカー整備を効率よく活用。
A.S.
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