中京重機のオフィシャルブログです。
2020 04.13
カテゴリ: 建機、 中古建機、 中古建設機械、 建設機械、 中古重機、 アタッチメント、 解体
こんにちは。
新型コロナウイルスの感染拡大で、世の中がこの数か月でかなり変わってしまったように思えます。
毎日状況が変わっていきますが、それに合わせて変わっていかなくてはと思います。
そんな中で新しく整備の世界に入る人たちが一番最初に身に付けてほしいものはなんでしょうか?
前回前々回に続いて中京のメカニックT.I.さんに話を聞いたところ、「安全確保じゃないかな。」と答えが帰ってきました。
それでは中古重機整備士聞き語りの3回目(完結編)スタートです。
メーカーによって○○製の重機なら大抵こうだという特徴、例えばエンジン不調の際にこういった整備をしてあげるといったセオリーはあります。日立建機さんやコマツさん、CATさんなどの重機・建設機械メーカーで採用された新入社員や第二新卒として転職した整備士さんとかはこういった部分を身に付けるのが引き出しを増やすことに繋がるかと思います。
中京重機には本当にメーカー問わずあらゆる重機がきます。だからいかに引き出しを多くして、メーカー毎のセオリーを身に付けるかが大事です。そういった意味ではメーカー・新車/中古車問わず経験を積めて仕事は楽しいですね。整備士として成長したい・道を究めたいという人にはうってつけなのかもしれません。
中京重機が扱う補修というのは、新車よりは経年劣化等のダメージがありますから新車の整備とは少し違うんです。補修の中でよく行われるのが溶断等の作業です。溶断は簡単に説明すると、アセチレンガスと酸素のトーチで部材を溶かしてエアーで吹き飛ばしてあげる作業です、その結果部材が切り離されます。でも吹き飛ばした後の溶断面がぐちゃぐちゃだと後から修整が面倒になりますので、溶断面をきれいにすることがとても整備の仕事では大切なんです。
溶接もよく行います。どの鉄にはどの溶接棒※1を使うとか、溶接棒にも硬さ等色々種類があります。中京重機で扱うクラッシャーのようなアタッチメントの先端は、硬度が高いものや耐摩耗性が高い材料を肉盛り作業で使うのですが、肉盛りも慣れていないと溶けた部分が重力で流れてしまいます。ちょうどお菓子作りの時のクリームを思い出してもらえればお分かりじゃないでしょうか?
ちなみに肉盛り以外には、外れてしまった部品をつける時にも溶接はよく使います。
※1部材と部材のすきまを埋める働きをする溶加材の棒。
ピン穴の補修等溶接の出番は多い。
こういった溶接・溶断のような作業は、工業高校で勉強している人とかは経験済みなのかもしれませんし、人によって作業の勘所をつかむまでの時間は違うでしょう。中京重機だと要らない鉄がありますから、練習できると思います。これを読んでいる人も、重機整備工場や職場に練習用の鉄があるか、先輩に聞いてみてもよいでしょう。
電気系の整備も発生します、最近は重機の世界も電気的に進んできました。整備や修理の際、テスターを繋いで通電しているか確かめてみて、断線していたらハンダ付けか部品自体をとりかえる作業は多いです。回線やシステム系のトラブルは診断用のPCをつなげて異常個所をチェックすることもあります。電気系統に強い整備士さんの場合は、基盤のハンダがはがれていたとか抵抗が一個だめになっているとかまで対応することもありますが、そうでない場合はやはりアッセンブリー交換※2や基盤全体の交換という対応をすることが多いでしょう。
※2ひとまとまりになっている部品ごと交換すること。
ちなみになんですが、私は重機の塗装も行うことがあります。自動車整備の経験から塗装を手掛けたことがあって※3サンダー掛けから始まって塗料の調合、実際の塗装まで行っています。こういった具合にそれぞれの整備士の経験を生かした持ち味というものができてくるんです。
※3塗装や補修をする前にサンダー(研磨機)で面の凹凸を研磨して平らにすること。
さて、新人の整備士の人たちに向けて、整備の作業を紹介してきましたが、ある程度慣れると、プロである以上”整備作業の結果に対して一定の品質を必ず担保できるようになる。”ということが次の目標になるでしょうね。
整備の工程それぞれにセオリーは決まってるのです。ピン穴を補修するために行うボーリング作業を例にとると、機械の穴を修正するわけですから、摩耗等で変形してしまった穴に本来あった穴の中心を設定して、旋盤装置のシャフト(軸)を固定して、軸受けのベアリングをどういった距離感でつけるか、これが作業のキモ・セオリーになります。その設定ができると後の切削作業は機械がやってくれます。作業のシナリオが決まって方法や設定もきちんと行うと作業の結果はおのずと出てきます。これを毎回しっかりスケジュールに沿って再現することが作業の質、言い換えれば整備という仕事の質・お客様の満足度を維持させることになるんですね。出張先等の場所・予定や材料、条件が違っても、”自分のやりやすい条件を整えるか・作業を完遂できるパターンを再現できるか”という段取りが重要ですね。極論を言えば場所が違うだけで再現する演目が同じという意味では整備作業は舞台のようなものかもしれないですね。
作業前の段取り・設定は実際の整備の質を左右するキモの部分。
ただし、新人さんが作業の一番初めにお願いされるのは清掃・掃除・後片付けになるでしょう。掃除を行うことで身につくものは色々ありますが、まずは“どこに何があるかが把握できる”ことが重要なことです。例えばオイル(廃油など)を受ける器はここだとか。結局、新人さんが掃除という作業で何を吸収するかって言ったら、”どこに何があってこの工具はなんだろうなぁっていうことを考える・身に付けること”で、これは一番大事なんですよ。ここでも興味を持つということは本当に大事ですね。そして掃除・整理整頓をきちんと行うことは安全確保にもつながります。
本来は一番最初にお話しするべき内容だったかもしれませんが、安全に気を配ることは本当に大切なことです。当然、私達も中京重機に入社するまでに親御さんや学校で大切に育てられてきたお子さんを新人としてお預かりするわけですから、安全管理はしっかり教えていきます。ですが、重機・建設機械の傍や中古重機の整備工場の中というのは、経験がない人にとっては相当に怪我等のリスクが高い場所です。まずは”怪我がないように、人に怪我ををさせないように過ごしていく”そういった所作を身に付けてほしいです。そして何よりも、他に色々な職種・業種がある中で中古重機整備という職場を目指して飛び込んでくれた若者に怪我をさせることは絶対に防ぎたいのです。
ヘルメットの着用は基本中の基本。
重機整備中に起きるトラブルの中でよく発生しがちで時には深刻なケースに繋がることもあるのが、体が挟まれるという事態です。単純にパーツをはめようとしたときにはめる面に指を挟んでしまうとか、単純なミスでも重機・建機という巨大なものが相手なだけに本当に怖いです。前にいた職場で実際起こったケースでは、作業員が油圧ショベルの足回りを洗っている際にアームで本体を持ち上げてクローラーを上げて回転させて洗う際に、クローラーの隙間にゴミがあって手でパッと取ろうとしたら鉄板と鉄板の間に指が挟まれることがありました。そういう事故が起こることはいくらでも予想はできたでしょうが、つい指を出してケガをしてしまう。
他にも、例えばクレーンなどで鉄板のパネルを斜めに吊っていた時、パネルが接地面・地面から離れた際に揺れて挟まれてしまうとか、クレーンを操作していた人が壁とパネルで挟まれてしまうということもあります。こういったことがあるので、”物が動いた時にどの方向にどう動くか予想して立ち位置を考えること”が必要です。
危ないことに対するセンスを磨くことは本当に大切なことです。このブログを読んで下さっている人の中に大規模な整備工場で勤務する予定がある場合は、職場で作業前に「どのような危険なことが発生予想できるか」「どういうことを守って事故を防ぐか」、一筆書くところもあるでしょう。
クレーン作業というのは元々下に置いてあったものをわざわざ上に上げている作業なので、やっぱり重量物が頭上にあること自体がリスクがある作業といえます。なぜなら上にあるものは下に落ちるものですから。物凄い当たり前の話ですが・・・。大体これぐらいの重みであればこれぐらいの吊り具で吊れるっていう予測を立てて作業していても、予測は予測でしかないのです。重心という吊った際にバランスを取ることができる場所にあたりをつける際、ここに重量物や吊りのポイントがあるからバランスはこう取ればいいだろうというイメージ力や想像力等が必要になります。クレーンなどで物を吊るというのは玉掛けという講習が国によって用意されている程の難易度の高い作業なのです。
例えば重心を見極めるにしても、これ(下の写真)は整備作業の安全を高めるために、油圧ショベルのブームを油圧シリンダの取り付け部分で吊っていますが、実際の重心はもう少し後ろになります。この時のバランスが取れる場所はヘの字の頂点近くになっていて、パーツが付いて重くなっているあたりです。
移動以外にも固定の際、安定度を高めるために吊る場合もある。
“こういった時にだいたいここら辺かな?”と言う勘所は経験でしか身につかない部分があります。吊ってみたがバランスが悪いというのは積み重ねで覚えていくものですから。
重機によっては仕様書に、ここが吊る時の重心ですよという指示が出ているものもありますが、外した部品などは重心の指示がないので臨機応変に吊りのポイントを見つけるということになります。
吊られている吊荷が地面から離れた状態を地切りとい言いますが、 接地面から離れた瞬間に重心が移動します。接地面側の反対側の吊り荷の端がポンと上がり、接地面側は下がります。上がる側にものがのっていたら飛んでいくこともありますし、下がると物が落ちたりします。それ以上に吊荷が人に当たってしまうことがあるかもしれません。重ければ、その力は強いですし、軽いとそのスピードは結構早いんです、地面から離れた途端にそんなことが起きてしまいます。
何kg以上から重心をしっかりと見なくちゃいけないっていう目安があるかどうかですが、軽くても重くても吊ったらストンと落ちますし思わぬ方向に飛んできます。軽ければ軽いほど飛んでくるスピードは早くなります。それでもあえて言うならば本当に私見ですが、自分が支えることのできる重さかどうかが一つの基準かなと思っています。私の場合は20kgくらいを目安にしています。これを超えたら私は支えることができません。実際の重さは個々の判断ということになります。でも10 kgでも高いところから落下した時のエネルギー速度とか防ぎようがないんです。少し上の方で作業していてスパナー1本落としてもヘルメットに刺さるでしょう。重力もかかってるし落下スピードも要素に入ってくるからです。重い軽いに関わらず、やっぱり注意は当たり前のようにしてほしいですね。高い位置にある吊荷だけ注意すればいいというわけではないんですよ。
自動車でもジャッキアップの際ジャッキが外れて挟まれる事があります。低い場所からものが落ちてくるので、すぐに挟まってしまいます。高ければ高いほど気づいて逃げれる可能性は高いかもしれませんが、低ければ低いほど落ちるとすぐに挟まってしまうので、浮いているもの・掛かっているものは高い・低い・重い・軽いにかかわらず注意してほしいのです。
大きな物の据え付けにはクレーンが登場する。
大きなものなどを支えることがあるので、重機整備は力が強い人のほうが向いている?と思われるかもしれません。しかし、重機自体は大きいんですけど、エンジンルームとか破砕室などは人間が入れるようには作っていません。そんな狭い場所では体の小さな人の方が活躍できる場面もあります。狭い場所に手が入るとか、体格の良い人がもうちょっと数cm届かないところでも、体が小さな人が隙間に腕を入れることができて触れるとか。小回りが利くというんでしょうか。
また火気という点も安全面で気を回さなくてはいけませんね。油がウエスに染み込んでいる場合や引火性が高いウエスやダンボールを風よけ等何らかの理由で近くに置いているような場合は、ペットボトルなどに水を入れるなどして用意する必要があります。これは私見でちょっとしたことですが、「何かが起こってしまったときにパニックにならない、2次災害を引き起こさない」という意味で重要なのではないでしょうか。
切削装置作業で発生する切削片もかなり熱いものですし、刃のようになっていて手が切れるなどはよくあります。冷却用の油などで冷やしていてもかなり熱いので危険がまったくなくなることはありません。
まとめると、本当に安全に気を配ること、別な言葉で言うと危険な場所へのセンスを高めることが大事です。物が動く時に予想して動く先には絶対に立たない。何かを扱うとき、それを必ず素手で扱わなくちゃいけないのかどうかまず自分で確認するなど、何かのアクションをする結果で起こることを予想して工場内では動いて下さい。
まだ、新人の整備士さんにお伝えしたいことはありますが、それはまた機会がありましたら、その時にできたらと思います。
中古重機整備について、こんな仕事がしたい、こう考えてるという方がいらっしゃいましたらこちらをクリック!!
T.I.さんのお話はこれで最後になります、T.I.有難うございました。
さて如何でしたでしょうか?作業環境の確保はどこの職場でも大きな課題だと思いますが、油圧ショベルやフイニシャー、もちろん環境機械など重機の整備の世界では、対象物が大きいために大きな問題になります。中京重機でも安全衛生点検の仕組みを作って定期的に工場内をチェックしています。整備の技術を向上させる前に、安全の確認が一番重要ということがT.I.さんの言葉の中で一番身に沁みました。
N.N.
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